2008年07月26日

金融産業

米国の真の危機は、目の前で激しく軋む金融システム危機ではなく、中長期的に基幹産業たる金融産業が衰退し、それに伴って潜在成長率が低下していくことにあるのではないだろうか。

 サブプライムローン問題が暴きだしたのは、30%や40%ものリターンを得られるという投資銀行とその出資者が抱き続けた野望が今や幻想に過ぎない、という事実である。とすれば、その金融産業に支えられてきた覇者米国の経済成長は、砂上の楼閣と化すのではないだろうか。(中略)

21世紀に入って、そもそも投資銀行やヘッジファンドがハイリターンを得るのは難しい局面に至っていた。その焦りがサブプライムローンに深入りした原因ともいえる。

 金融取引は、市場の歪みを利用して利益を得る。それを、裁定取引という。その歪みが大きければ大きいほど、成功したときの利益は巨額になる。

 有名な2つの例を挙げよう。

 1992年、英国は景気低迷に陥っていた。当然、通貨であるポンドは弱含んでいたのだが、欧州通貨制度(EMS)に加盟していて他通貨と連動義務があったために、実力以上の高値がついていた。時価と実力値が乖離していたのである。

 英国政府はいずれポンドを切り下げ、EMSから離脱せざるをえないと読んだジョージ・ソロス氏は、その価格の歪みに付け込んだ。英中央銀行(BOE)を相手に膨大なポンドを売り浴びせ、BOEが買い支えきれなくなり、目論み通りに下落すると底値で買い戻し、20億jもの利益を上げたのだった。

 1998年、ドル連動制によって高止まりしていたアジア各国通貨がヘッジファンドの猛烈な空売り攻勢で暴落し、アジア危機が発生したのも、英国と同じ構図である。

 このように、投資銀行やヘッジファンドは大きな歪みを求めて世界中を徘徊する。短期的利潤を獲得できる場を強引に作り出すさまは、「焼畑農業さながら」(池尾和人・慶應義塾大学教授)である。投資家から30%もの収益期待を負うから、並みの歪みでは満足できないのである。

だが、歪みを利用した金融取引、裁定取引は、それが繰り返されることで金融市場の歪みが解消され、効率化が進むという性質を持っている。また、各国政府や大企業などのメインプレイヤー、いわばプロたちは過去の教訓に学び、金融知識と実践的技術を習得した。金融機関と対等なほどに、金融取引に洗練した。

 世界の金融、資本市場で効率化が進むと同時に、もはや、1990年代のBOEやアジア各国のように、へまをしてくれる政府も中央銀行もいなくなったのである。

投資銀行やヘッジファンドにすれば、この10年で“焼畑”に適した耕地、つまり収益機会は大きく減ったことになる。

 そこに、金融に無知、金利に鈍感なアマチュアの集団――住宅ローンの消費者金融版、サブプライムローンの購入者たちが登場した。米国住宅バブルに酔い、彼らは自らの返済能力を見失い、借入額を膨らませた。返済能力と借入額の関係は大きく歪んだ。

 サブプライムの購入者にすれば、得られるもの(住宅)に比べ、失うもの(元利返済金)のほうがはるかに大きい。金融機関にすれば、与えるものより、得られるもののほうがはるかに大きい。日本で問題になった消費者金融も同じである。つまり、金融に無知なるがゆえに不等価交換、無理な取引に応じてしまう。金融機関は、そこに付け込む。経済学では、「略奪的取引」と言う。

 ローンを貸し込み、その証券化商品に、ここを先途と世界中のヘッジファンドや投資銀行が群がり、深入りしたのは、世界中でビッグビジネスのチャンスが減った焦りが背景にあろう。サブプライムローンは最後の焼き畑農業だったのだ。

 ところが、それすらも幻想であったと、今は言える。住宅市場の悪化で金融機関は損失を拡大する一方だ。それは、何年かの間にサブプライムローンとその証券化商品で稼ぎに稼いだ利益を、吐き出す過程ともいえる。そうして利益と損失を通算すれば、サブプライム関連ビジネスは、30〜40%ものハイリターンを生むビジネスどころか、ひとケタ代前半の極めて平凡な金融取引、もしくは赤字取引として総括されるだろう。

新興国に投資しても真っ当な投資であれば、せいぜい10〜15%のリターンしか望めまい。世界のどこを探っても大きな歪みなど見当たらなくなったところに、当局の経営監視機能が働く。もはや、米国の投資銀行は高収益のビジネスモデルは保てない。機関投資家などの高い期待を収益化することはできなくなる。

 預金貸出し中核である商業銀行の業務は極めて退屈で、有名大学のMBA取得者などは相手にしないといわれてきた。投資銀行も、今後は似たような存在になってしまうかもしれない。

 問題は、金融産業が米国の基幹産業であり、米国流のグローバリゼーションを世界的拡張に乗って成長を続けてきたことである。その中核であるハイリターンの巨大な金融機関群が平凡な利益水準に落ち、凡庸な経営しかできず、存在感を小さくしていけば、米国の金融市場、資本市場に影が差し、ウォールストリートは活気を失い、機関投資家も個人投資家もおカネの投資先に困る。

 それら総体からなる金融産業が衰退すれば、現時点で数値的なシミュレーションはできないが、米国の潜在成長率の低下は確実であろう。

 潜在成長率が低下すれば、国内のあらゆる経済システムがそれに適合(アジャスト)しなければならない。それがどんなに大変なことか、バブル崩壊以降に潜在成長率が低下し、年金をはじめとして数多くの制度設計に狂いが生じ、いまだに適合不全に苦しんでいる日本が証明している。

 中長期的に渡って進む潜在成長率の低下と、それに伴う経済システムの変容こそ、米国の本質的危機ではなかろうか。



GDPと金融資産の関係は以前にも書きましたが、金利との兼ね合いを考えれば一定の比率を保っていなければならないはずだ。分かりやすくいえばマンションの家賃が10万円なのに、マンション自体の価格は3000万円から1億円に値上がりしているような状況が生まれている。

3000万円のマンションが10万円の家賃ならば利回りは4%ということになる。ところが1億円のマンションで10万円の家賃では1,2%の利回りにしかならない。こうなるとマンションは暴落するか、家賃が30万円ぐらいに値上がりするかして調整される。

経済が成長して30万円の家賃を支払える人が多くなれば1億円のマンションも正当な価格ということになる。GDPが毎年二桁成長しているのなら、マンションの価格も2倍3倍に値上がりしても不思議ではない。日本の高度成長期もGDPの増大とマンション価格の値上がりは実需がともなっていた。

ところがバブル期になるとGDPの伸びが3%、4%程度なのに株価や不動産価格は2倍3倍に値上がりした。株式も不動産投資も利回りは1%程度になり、値が上がるから買われる様な状況になった。アメリカもこのような状況になり、返済能力の無い人も住宅ローンで家を買うような状況になった。家の値上がりは必然であり住宅ローン会社はローンを証券化して売ってしまうからリスクは無い。

このような状況で1億円のマンションは1億円の価値があると言えるとどこで言えるのだろうか? その値段を決めるのは利回り採算だ。30万円とか40万円でも借りる人がいれば1億円の価値のあるマンションと言えるが、10万円の家賃でないと借り手が現れないようなマンションは良くて3000万円の価値しかない。

このように家賃がGDPであるならば金融資産はマンションの評価額だ。それがアメリカではGDPの10倍にも金融資産が膨らんでいる。アメリカは金融産業が基幹産業であり30%の利回りや40%の利回りで稼いできたのだから、アメリカを見習えと日本の経済学者やエコノミストは称賛した。

アメリカのゴールドマンサックスやモルガンスタンレーと言った投資銀行は日本には無いものであり、役員や経営者などが元政府高官などがなっているから政府系金融機関のようなものであり、ポールソン財務長官はゴールドマンサックスのCEOだった。これではアメリカの金融政策はGSに筒抜けだろうし、GSにとって良い事はアメリカにとっても良い事であるといえる。

即ち、国際金融資本の利益はアメリカの国益でもあり、アメリカは本来のアメリカではなく国際金融資本に乗っ取られた国家である。金融産業は国策産業となりGSやMSの社員はエリート中のエリートが成り、新入社員でも億単位の年収がもらえた。このような金融産業に、キッシンジャーのようにアドバイザーとなって外国との仲介ビジネスで稼ぐ仕事がアメリカ政府高官の天下り先となった。

だから、ライスやヒルのように退任まじかになると中国や北朝鮮に擦り寄って政府高官とのコネ作りに夢中になる。日本はこのような国と同盟を組んでいるのだから、日本がカモにされて金を騙し取られやすくなるのも当然だ。アメリカはドル札を刷り散らかして日本や中国から物を買いまくった。

日本の政府日銀は円高を防止すると国民を騙してドルを買い支えてアメリカに利益を供与した。日本にあるドルや米国債は売ることはままならず、いずれ金利すら払ってもくれなくなるだろう。

アメリカの金融産業は新興国への投資で大きな利益を稼いできた。特に中国への投資は実を結んで、中国はオリンピックを開くまでの国家に成長した。中国は世界の工場となり、労働賃金は日本の20分の1で日本国内の工場は閉鎖されて中国に移転した。日本ばかりでなく台湾や韓国やシンガポールなどのアジアからも工場を進出させたから中国のGDPは毎年二桁の伸びとなった。

このように中国の経済発展はアメリカの国益と合致していた。このまま中国がアメリカに利益配当をもたらせば「米中の経済同盟」は順風満帆となる。このように経済から見ればアメリカにとって中国は味方なのであり日本は敵ということになる。日本はこの事にまだ気がついていない人が多い。

ポールソン財務長官は中国に80回も訪問して中国政府高官とは関係が深い。このような状況になりようやく日本でも米中同盟の存在に気がつく人も増えてきました。7月20日に「米中に挟撃される日本」というシンポジウムの模様を紹介しましたが、日本の戦略はいかにして米中の挟撃から身を守る事ですが、日米同盟で政治家達は撹乱されている。

アメリカにとって中国が敵でないのならなぜ日本国内に米軍基地が存在するのか? 日本はあまりにも東西の冷戦構造に囚われすぎて冷戦崩壊後も中国が日米にとっての敵であると思い込みがあった。中国が共産主義国であるにもかかわらずアメリカの金融産業は中国と手を組み利益を上げている。

中国が順調に経済発展をして成熟した民主主義国家になるのなら日本の利益にもなりうるが、軍事大国として太平洋の西半分を管理下に置こうとしている。アメリカの軍部は危機感を持っているが、ウォール街は中国をステイクホルダーとしてアジアを米中で共同管理していくつもりだ。

日本人は中国が近代的な民主主義国家になるとは誰も思ってはいませんが、アメリカ人にとっては中国人も日本人も見分けがつかないから、日本が近代的な民主国家になったのだから中国もなれると考えているようだ。しかしオリンピックが中国人がいかに野蛮な国民であるかを知る機会になるだろう。その時になって中国への投資が失敗であったとアメリカ人も気がつく時だろう。

posted by 伊藤園 at 13:59| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。